ホテル御曹司が甘くてイジワルです
そしてリニューアルして生まれ変わった『坂の上天球館』での模擬挙式は、今日の夕方に行われる。
新郎新婦のふたりはオーベルジュの二階の客室で、プレアデスグループのブライダルスタッフと準備をしていることだろう。
長谷館長はふたりの挙式の司会進行と星座解説という大役を任されて、さっきから少し緊張気味に見える。
びしっとしたブラックスーツを身にまとい、少し強張った顔でシャンパンを飲んでいる。
「模擬挙式、楽しみですね」
館長の耳元でそう言うと、館長の眉毛が八の字に下がった。
「僕、ネクタイ苦手なんだよ」
ぐずる子供のようにネクタイをゆるめようとする館長を、苦笑しながらたしなめる。
どうやら挙式への緊張ではなく、ただただ堅苦しい恰好が苦手なだけのようだ。
思わずくすくす笑っていると、「夏目様」と声をかけられた。
振り向けば、秘書の遠山さんが微笑んでいた。