ホテル御曹司が甘くてイジワルです


遠山さんの運転する黒い国産高級車。その後部座席に座り、流れる車窓をぼんやりとながめていると、「そういえば」と声をかけられた。

「先ほど、副社長は毎日のように女性と食事をしていそうとおっしゃいましたが、プライベートで彼が女性を部屋に入れたのは、あなたがはじめてですよ」
「……そうなんですか」

そんなことを言われたら、私だけが清瀬さんの特別なんじゃないか、なんて勘違いをしてしまいそうだ。
なんだか胸が落ち着かなくて、窓の外を眺めながらこっそりと深呼吸を繰り返した。




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