冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
「私が本当はこういうことを自分で解決したがる人間で、今だって見届けたいと思ってることを、このふたりは知ってるわ。任せて申し訳ないと思ってることも知ってる。だからお互いに『ごめん』と言ったのよ。帰りたいから帰るんじゃない。帰らなくちゃいけないから帰るの。あなたの言う優位ってこれ?」

「今度は被害者アピールね」

「私に配慮なんてこれっぽっちもしてないあなたから、申し訳なさそうにしろと言われる筋合いはないわ。どっちが偉そうなのか、自分を振り返ってみて」


だめだ、本当に時間切れだ。私は了たちの反応を見るひますらなく、急いで会議室を出た。道中でまこちゃんに連絡をして、自分の支度を優先してと伝えなくては。

絶望的にのんびりしているエレベーターをイライラと待ち、自分の気が立っていることに気づいて、深呼吸をした。


──当然のように配慮を求めるのよね。


そう思うのはわかる。だけど違う。"当然の配慮"を求めているわけじゃない。どれだけ自分たちで努力し、あがいたところで、社会の容認なしには暮らせない立場なのだ。どうか許してほしい、見逃してほしいと日々身体を縮めている。

これを被害者アピールというのなら、そう言われるのを受け入れるしかないんだろう。




「ごめんね、まこちゃん、間に合う?」

「大丈夫! 今日は職場でメイクするわー!」


私が家に帰るのと同時に、まこちゃんは飛び出していった。が、私の横を通りすぎてから、うしろ向きに戻ってくる。


「なにかあったの、顔が暗いよ」


子どもの面倒を見ていると、とにかく手を洗う回数が増える。一日そうしていたのであろう、ひんやりした手が私の頬を優しくなでた。

昔から、この手が私の親代わりだった。
< 89 / 149 >

この作品をシェア

pagetop