冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
「いいことを教えてもらったわ。これから気をつける。まこちゃんをミックスといえるかはわからないけど」

「人はみんな混合物、ミックスです。その度合いや成り立ちが、他者に理解しやすいかそうでないかの違いしかありません」

「ジョージさんも、戦ってきた人みたいね」


コーヒーカップ越しに、彼が目配せをした。


「はじめてお会いしたときに、僕の血や離婚の理由について、尋ねようともしませんでしたね」

「うちも説明事項が多い家庭だから。聞いてほしくないから聞かないってわけじゃないんだけど」

「舞塚令嬢の件は片づきました。おふたりはあらためて結婚に向けて進むべきです。今後どんな横やりが入ろうと、僕はもろ手を挙げてあなたを歓迎し、後押しますよ、早織さん」

「そうだ、そちらはどう解決を見たの?」


ちょうどそこに、食器洗いを終えた了が戻ってきて、ジョージさんの隣の席についた。腕まくりしたワイシャツ姿でコーヒーをすすり、ひとつうなずく。


「舞塚はかなり頭の凝り固まった家みたいだね」

「旧家と現代社会の間にできた溝にすっぽり落ちてしまったお嬢さんでした。女性は嫁げとしか言わない家。だけど一歩家の外に出たら、自立していない女性は軽んじられる。見合いをしながら、親も認める範囲の仕事をすることで、糸のように細い足場を生きてきたんです」

「Selfishでの仕事は親にも無断で、冒険だったみたいだよ。だからわざわざ実家の競合であるソレイユの派遣会社を使ったんだね」

「急に辞めたのは、もしかして連れ戻されたのかしら」


そうみたい、と了が気の毒そうな顔をする。どこまでも人がいい。


「そうして彼女の人生から、本人の意思が介在する余地を奪い続けてきておきながら、ご両親は彼女が二十代後半に差し掛かると"どこにも出せない行き遅れ"という扱いをするようになったんですね。なかなかのクソ親だ」


彼女があれほどまでに私を敵視した理由がわかった。彼女からしてみたら、全部手に入れている女に見えたんだろう。事実はどうあれ。

私は了が会議室に入ってきたときの、舞塚さんの反応を思い出した。
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