冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
舞塚さんが「そうでした!」と身体を起こした。持っていた荷物をテーブルに置き、中からテイクアウトフードの箱を出して並べる。


「社長さんからお食事を預かってきました。社長さんは急な用事が入って、そのまま別件へ向かうそうです」


てきぱきとスプーンやおしぼりを全員に配り、ごみ入れとしてビニール袋をひとつ、広げて置いた。そういえば、お嬢さん育ちぽいわりに、こういう実際的なところがある人だった。了はぽかんとしている。


「あ……ありがとう」

「狭間さん、私が言うことじゃないですが、負けないでください」


気圧された了が「う、うん」とこくこくうなずいているうちに、「では私は会社へ戻ります」と颯爽と出ていく。

「駅まで送るよ」とジョージさんが追いかけ、部屋には私と了が残された。


「……ジョージさんて、女性の趣味、わりと個性的……?」

「自分で手を入れる余地がある女の子を好きになるタイプなんだよね」

「ああ……」


そういう人、いる。


「妹さんもそういう女性だったの?」

「ある意味ではね。でも妹は、だまって影響されてやるほどかわいげのある奴じゃない。もともと気心知れた幼なじみだっただけに、大ゲンカして円満離婚だよ」

「難しいものねえ」


しみじみうなずきながら、お互いフードボックスを開いた。中は食欲をそそる匂いのチャーハンだった。了がスプーンを手に「まあハッピーエンドだよ」と言う。


「妹は『旦那じゃないジョージのほうがずっと好き』って言ってるし、ジョージも『俺でなんとかできる物件じゃなかったわー』って笑ってる」

「舞塚さんとは案外、ナイスカップルかもしれないわね」

「俺もそう思う」
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