その花が永遠に咲き続けますように
「咲、緊張してんの?」

ギターをいじりながら、横目で私を見て永君がそう聞いてくる。

そりゃあ緊張するだろう……。ずっと一人で歌ってきた。日奈に裏切られて誰とも関わらなくなる前から、人前で歌うことは殆どなかったのだ。それなのに、今日はいきなりたくさんの人の前で歌う。
この快晴だから、一般のお客さんの入りも上々だと小耳に挟んだ。ステージを見るかどうかはお客さんの自由だけれど、ステージがある中庭にはたくさんの屋台が立ち並んでいるから、興味がない人達にも私の歌声は届いてしまうだろう。

だから私はさっきから、わかりやすいくらいに緊張している。手は震えるし、トイレに行きたくなるし、そわそわしっぱなしだ。これから同じステージに立つはずの永君はとっても落ち着いていて、何だか悔しいけれど……。


「それにしても、皆ステージ衣装とかバンド名とかちゃんと用意してて凄いな」

永君にそう言われ、私も「あー、そうだね」と返す。

さっきから、このステージ裏でたくさんのバンド出演者達と擦れ違っているけれど、誰もが気合の入ったステージ衣装とか、オリジナルのTシャツで合わせていたりとか、とにかく衣装にこだわりを感じる。

私達はそこまで意識が回らなくて、二人して普通に制服だ。

バンド名もそう。バンドをやる人達はバンド名が必要であると申請時に言われたのだけれど、私達にはネーミングセンスというものがなかったようで、他の人達はカッコいいバンド名なのに私達は、〝一組の相澤と八組の吉宮〟というしょうもない名前で出演することになった。
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