その花が永遠に咲き続けますように
「ちょっと大輝、何言ってんの?」と白山さんも言うけれど、武入君はとても冷静に、


「俺さ、咲のことバンドに誘う前に、まずは八組に行ったんだよ。相澤さんのことももちろん後から誘うつもりでいたけど、まずは男同士で話をした方がスムーズにいきそうだなと思って。けど、八組に吉宮なんて奴はいないって言われて。咲と吉宮君のステージは全校中でも話題になってたから、その分、八組の奴等は不思議に思ってたらしいぜ」


と答える。


すると荻原さんまでもが。


「実は私も気になってんだ。触れちゃいけないのかと思って何も言わなかったけど……。八組に同中の友達がいるから文化祭の話をしたんだけど、その子にも八組に吉宮君なんていないよって言われて」

「えー! じゃあ知らなかったの私だけ? 相澤さんは当然知ってたんだよね⁉︎」


白山さんが私にそう聞いてくるけれど、私は


「え……っ?」


としか返せない。



「……もしかして、相澤さんも知らなかったの?」

白山さんにそう尋ねられ、私は何も答えられないまま、隣にいる永君に視線を向ける。


すると。



「……ごめん」

彼は困ったような顔で私を見て、ゆっくりと言葉を発していく。

「悪意のある嘘で騙そうとか考えていた訳じゃないんだ。初めて会った日、俺は咲の歌声に惹かれて、話し掛けてみたいなって思って。ちょうど学ラン着てたし、同じ学校の生徒のフリをした方が咲も警戒しないで話してくれるかなって思ったんだ」
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