その花が永遠に咲き続けますように
「私が乗る電車もそろそろ来るから行くね。夏休みから始まる練習、楽しみにしてる」

私がそう言うと、彼も「うん」と答える。


だけど、彼に背を向けて一歩歩き出すと、後ろから「咲」と声を掛けられ、足を止めて振り返る。


「どうしたの?」

「あのさ。来週の土曜日って空いてる?」

そう尋ねてくる彼の顔は、穏やかな笑顔だ。


「来週の土曜日? 夏休みの初日だね。バンドの練習がなければ空いてるよ」

「そうか。じゃあさ、




デートしない?」



……え?


一ミリも予想していなかった彼からの言葉に、私は数秒間、思わず固まってしまった。
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