珈琲プリンスと苦い恋の始まり

叫ぶように父に声をかける私の声を聞きつけ、母が慌てて書斎へ来た。

「愛花？」と声をかけられた私は、振り向き母に言った。


「お父さんの腕が冷たい！お母さん、どうして！？」


声を発しながら振り返り、また「お父さん！」と言ったけど反応がない。

私は怖くなってしまい、だけど、父の腕には縋れなかった。


ブルブル震えながら側に来た母にしがみ付いて、「お母さん！どうしよう！」と叫んだ。


母は咄嗟に私を抱きかかえて書斎を出た。記憶はそこから先真っ白で、今もあまりよく思い出せない。


だけど、消防車の赤と救急車の白、警察官の青い制服と白黒のパトカーだけは記憶にある。


母は私の前なのに平気でボロボロと泣いてて、それを慰めるように近所のおばさん達が付いていた。


何が起きたのか分かったのは、父がちゃんとお布団に寝かされて、そこに行ってもいいよ、と許可が下りてからだ。