珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「実は、君には内緒で桜のことを色々と調べてみたんだ。
この家と土地を売りに出してた不動産屋さんに出向いて、以前住んでいた人のことを教えて欲しいと頼んだ。

そしたら、川並ハルさんという人に辿り着いて、その人が急な病で亡くなったと聞いたんだよ」


俺の口から自分の祖母の名前が飛び出し、彼女は一瞬大きく目を見開いた。
それでも直ぐに気持ちを建て直したみたいで、そう…と小さく呟く。


俺は試すような気持ちで彼女を見つめた。

その人の遺族がこの家と土地を売りに出したと続け、それを買ったのが自分で、その際に条件を付け加えた…と教えた。


「白蟻の原因となりそうなものは、全て排除して欲しいと願った。この家は写真で見る限りかなり古そうで、直ぐにでも白蟻の餌食にはなりそうだ…と思ったからだ」


それに庭の桜が含まれていることは知らなかった。
この庭に桜があったことさえも、俺は全く知らなかったんだから。


「…それで、君には申し訳ないと思ってる」


俺がそう言うと、彼女は無言のまま目を向けてきて。


「どうして」


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