珈琲プリンスと苦い恋の始まり
epilogue;在りし日を振り返って
「まなちゃんの実父と僕は、同じ小学校に勤める教員だった」


過去を話しだす愛花の継父は、懐かしそうに目を細めた。


「高学年の理科を担当してるのが彼で、僕は五年生のクラスの担任をしていた。
まなちゃんの父親は実に研究熱心な人で、理科の授業をいつも楽しく、分かり易くするにはどうしたらいいかを真面目に考えている人だった。


それが、あの日、急に…本当に呆気なく、この世を去った。
それを聞いた僕は信じられず、驚きを胸にしたまま家へ出向き、彼のご遺体と対面した。


彼はとても穏やかそうな顔で眠っていたよ。
なんの不安もなく、落ち着いているように見えた。

……だけど、遺族の妻とまなちゃんは、その死が受け入れられなくて茫然としている。
特に和恵は見てられないくらいの憔悴ぶりで、僕は胸が凄く痛んだ……」


キッチンの流しに並んで料理する二人を見て、昇平さんは、ほっ…と小さい息を吐く。

まさかあんな姿が見れるようになるとは思わなかった…と囁き、俺に向き直って「ありがとう」とお礼を言った___。



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