珈琲プリンスと苦い恋の始まり
俺と彼女は、あの寺で写真を撮った後、各自の車に乗ってこの家に着いた。

別れ難くて玄関前で話をしていたら、仕事から戻ってきた昇平さんとバッタリ出会い、中へどうぞ…と招かれたんだ。


愛花の母親も、俺の急な訪問に驚きつつも喜んだ。

二人して「上がって下さい」と頼まれ、四人で一緒に夕食を取ろう…ということになった。




「愛花、料理を手伝って」


母親がそう頼むのを彼は初めて聞いた、と言った。
自分達は愛花に遠慮してばかりで、踏み込むことが出来難かった…と語った。


「まなちゃんが、僕と和恵との結婚を、決して喜んでるようには見えなかったから」


自分はとにかく、和恵の気持ちを立て直してやりたかった…と言う昇平さんは、それがまなちゃんを置き去りにする結果になったんだろうと思う…と話した____。



「結婚後、和恵が僕のことを『お父さん』と呼びなさいと言って叱ったんだ。
まなちゃんは、それをどうしても受け入れられなくて出て行った。

僕達は焦ってあの子を探して、実父の両親が住んでる家にいると分かってホッとした。

< 258 / 279 >

この作品をシェア

pagetop