その恋に落ちるのは、彼の罠に掛かるということ


その後、別の店で二次会が行われ、思いのほか盛り上がってしまったため、いつもはそんなことないのに終電ギリギリの時間になってしまい、皆で慌てて帰り支度をする。


と言っても、時間ギリギリなのは私の家とは反対方面の電車。私の終電はもう少し余裕がある。
二次会参加者の中で、反対方面の電車に乗るのは、私と武宮課長だけらしい。
そのため、河野さん達は走って駅まで向かい、私と課長は後からゆっくり駅まで歩いていくことになった。


「じゃあ、行くか」

店の前で二人きりになってから、課長にそう言われるけれど。


「ぅ……っ」

「幹本さん?」

私は口元に手を宛て、その場にうずくまってしまう。
気持ちが悪い。そんなに飲んではいなかったはずだけれど、酔いが回って、結局本当に具合を悪くしてしまった。


「大丈夫か?」

課長も私の隣にしゃがみ込み、私の様子を伺ってくれるけれど……なんと申し訳ないことか。


「す、すみません。私は大丈夫ですので、先に帰ってくださって結構です」

私の自己管理が出来ていなかったせいでこんなことになっているのに、課長をいつまでも付き合わせる訳にはいかない。
けれど、

「こんな所に置いていける訳ないだろ」

と言われてしまう。
きっと心配してくれているのだろうけれど、もしかしたら呆れられているのかもしれないとか、怒っているかもしれないとか色々考えてしまって不安になる。
でも不安になると更に気分が悪くなり、負の連鎖のように感じた。


そんな時だった。


ポンポン、と頭に心地良い重みを感じる。
隣に座ってくれていた課長が、俯いていた私の頭を撫でてくれているのがわかった。


本当に心配してくれているのが伝わってきて、彼のことを疑ってしまった自分を恥じると共に、気分が段々と良くなっていくのを感じた。
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