惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
このまま治らなければいいのに……。
病院の先生には一ヶ月後にまた来てくださいと言われているだけで、その間は一度も通院はなし。私が怪我をしてから約三週間。治らないほうがいいと思う邪な気持ちがあるから、それがどうしたって顔に出る。
病院の予約は一週間後。そのときに完治を言い渡されれば、陽介さんとも終わり。
そう考えると、鉛を抱えたように心が重かった。
タクシー乗り場まであと少しというところまで来たときだった。私たちの少し前で一台の車が急停車する。見覚えのある車体に思わず足を止めた。
……陽介さん? 迎えはいいってメールを送ったのにどうして。
「香奈? どうしたんだ? 具合でも悪いか?」
森くんの声は耳を素通り。
運転席から降り立った陽介さんにドキッと心臓が跳ねる。
私の視線を辿って彼に気づいた森くんが、「えっ? 副社長?」と驚いた声を上げた。
どこか不機嫌なオーラを身にまとった陽介さんが私たちの前で立ち止まる。
「副社長、どうかされたんですか?」
そう尋ねる森くんに見向きもしない。