惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
シュルルと音を立ててネクタイを外し、ワイシャツのボタンもふたつ外す。そして陽介さんはダイニングチェアーに掛けてあったネイビーのエプロンを着け、早速キッチンに立った。
思いがけず見たエプロン姿がやけに似合っていて、なんだか胸が落ち着かない。ソファに座りながら首を伸ばしてキッチンのほうを見ていると、てきぱきとした動作には無駄がなく、料理に慣れていることが窺えた。
待つこと二十分。部屋には食欲をそそるいい匂いが立ち込めた。
「香奈、できたからこっちにおいで」
呼ばれてテーブルへ行ってみれば、そこにはチャーハンと野菜スープが用意されていた。
まるで中華料理店で出されるもののように、まあるい形になったチャーハンは見るからにおいしそう。野菜スープも綺麗に透き通っている。
「今夜は料理するつもりじゃなかったから、ありあわせのものになるけど」
「陽介さん、料理が得意なんですね。すごくおいしそうです」
椅子に座って鼻からめいっぱい息を吸い込むと、小さくキュルルとお腹が鳴った。慌てて抑えて陽介さんを見てみたら、聞こえていなかったようでホッとする。
「大学時代からひとり暮らしをしてたから。まぁ味は保障しないけど」