惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

エプロンを外して謙遜しつつ、彼も向かいに座った。
いい匂いにつられるようにして「いただきます」と手を合わせ、遠慮なくひと口目をいただく。


「……わぁ、おいしい!」


見た目と匂いから想像していたものを上回る完成度。ごはんは芸術的なパラパラ具合で、私の好みを知り尽くしたかのような味付け。なにもかもがパーフェクトで、「おいしい」以外の日本語を知らない人になってしまった。


「少しは元気が出たようだね」
「はい。本当にいろいろとありがとうございます。部屋にまで転がりこんじゃって……」


彼氏にさせられたうえ、今度は空き巣騒ぎ。陽介さんからしたら、踏んだり蹴ったりだろう。


「いや、俺もこのほうが嬉しいし」


嬉しい? どうして陽介さんが?
言っていることの意味がわからずポカンと見つめていると、彼と目が合った。


「なに?」
「あ……いえ、なんでもないです。おいしいなって思って」


適当に誤魔化してチャーハンを口に運ぶ。

< 91 / 143 >

この作品をシェア

pagetop