惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~
「お代わりもあるよ」
「本当ですか? それじゃ、たくさん食べちゃおうかな……」
そう言って私が笑うと、陽介さんの顔も綻んだ。
おいしいご飯を作ってもらい、さらに洗い物までやってくれ、私はその間にお風呂を借りることになった。
濡れないようにと陽介さんにビニール袋を被せられた左手は、何重にも巻かれたテープのおかげで水の浸入は防げたけれど、厳重すぎて今度は外れない。ゆっくり温まったお風呂から出て、パウダールームでしばらく格闘してから諦めた。
「陽介さん、外れないんです……」
ソファに座って本を読んでいた陽介さんに助けを求めると、彼は「座って」と自分の隣のスペースをポンと叩く。おずおずと進み出て、そこにストンと腰を下ろした。
ハサミを持ち出してきた陽介さんが「さすがにテープを巻きすぎたか」と言って、ひと思いにビニールを切っていく。
その手元を一心に見ていたせいか、いつの間にか陽介さんとの距離が近づいていたことに気づいた。上目づかいに見ると、彼の顔まで二十センチほど。あまりの近さに鼓動が弾み、慌てて目を逸らそうとしたタイミングで、「よし、取れたぞ」と陽介さんが顔を上げた。