惑溺オフィス~次期社長の独占欲が止まりません~

「嫌だったら言って」


純情ぶって額にキスくらいでうろたえたくない。首を横に軽く振って答える。
すると間を置かず、今度はそのキスが鼻先に降りてきた。


「これは?」


ドキッさせられながらも、首をもう一度横にひと振り。その次を嫌でも予感する。
張りつめる胸がいっそう暴れだして、緊張に硬直する身体。耳の奥でドックンドックンと大きな鼓動音が響いた。


「それじゃ……これは?」


そう言うなり、唇に陽介さんの唇が押し当てられる。軽く触れるだけ。ものの数秒で離れた唇が、「嫌だった?」と甘い囁き声を紡いだ。

なにも答えられずにいる私に、陽介さんがもう一度念を押すように「嫌?」と聞く。

それでも私は反応ができない。それほどまでに胸が高ぶっているのと、どう答えるのが正解なのかわからなかったから。


「答えてくれないのなら、自分に都合のいいように解釈するよ」


……それでいいです。
心の中では答えが出ていた。

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