拾い恋(もの)は、偶然か?



部長の目が伏せられる。ふさふさのまつげに驚愕しながらも、私も自然と目を閉じていた。


合わさる唇は柔らかくて、もうすぐ冬だからか少しだけかさついている気がした。


部長とキスする時は、いつも緊張する。慣れることはあるんだろうか。いや、多分きっとない。


キスが甘いというけれど、部長とのキスはそれだけじゃなくて。


苦い時もあれば、優しい味がする時もある。


感情でキスの味は変化する。きっと私は、部長を前にするととても色々考えてしまうんだと思う。



それは、平坦な人生の私の心を唯一乱すのがこの人だから。そしてこれからも、この人以上の人は現れないんだと思う。



何度も、何度も、キスが降り注ぐ。


握られた手は痛いほどなのに、もっと強く握って欲しいとさえ思った。


ああ、やっぱり。


私はこの人が好きなんだ。

キスだけでそう思えるのだから、もはやプラトニックもいいかもしれない。



……ん?



部長の手が壁から降りてきて、私の後頭部を優しく包んだ。


ゆっくりと、何度も、部長は私の頭を撫でる。ただそれだけなのに、なんでだろう。

すごく、エッチな、感じ。





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