拾い恋(もの)は、偶然か?
艶かしく動く部長の手は、ゆっくりと私の耳裏に指を這わせた。
その間も続くキス、キス。
それはやがて、激しいものへと移ろう。
部長の指先が首や耳、髪を刺激する。反対側の手は離さまいと力強く握られ、唇は何度も塞がれる。
ああ、もう。
「んっ。」
思わず、声が出た。
そこでようやく、正気に戻った、私。いや、至近距離で同じく息を乱す部長も目を見開いて固まっている。
ゆっくり、お互いにさりげなく距離を取って、乱れた髪を整えた。
よく見れば、私服の前ボタンが2つほど取れているのに気付いた。
じとりと部長を見れば、ばつが悪そうに笑っている。
なんてこと。ここは会社の駐車場なのに。
さりげなさを装って回りを見渡せば、良かった、誰もいない。
「とりあえず、出ようか。」
「それは是非お願いします。」
「ああ。」
くすぐったいような雰囲気の中、車は発車する。まさか、部長の能力がここまでなんて。
「やりおるな。」
「ん?」
「いえ、別に。」
久しぶりだったからなのか、それとも、違うなにかなのか。少なくとも私はさっき、ひたすら部長しか見えていなかった。