拾い恋(もの)は、偶然か?



部長はすぐに、ミネラルウォーターを手に戻ってきた。とりあえず下半身だけはスエットを履いていてくれていることに感謝しつつも、程よく割れた腹筋にくぎ付け。



「ん?」

「い、ただきます。」


終始顔が緩んでいる部長に、この邪心を悟られたくない私は、なんとか平静を装ってみる、ものの。


結局水を飲みながら、チラチラと部長を見てしまう。


「音、零れてる。」


クスリと笑った部長の指先が、私の顎のラインを滑る。それは決して、水を拭く目的で動いているとは思えず、誘うように顎のラインをなぞった。


「っっ、部長。」

「翔吾。」

「へ?」


いちいち、距離が近いのはなぜだろう?部長の吐息が頬に当たるほどの至近距離で、細められた目がまっすぐに私を見つめる。


「俺はここでは部長じゃないぞ。」

「それは、そうですけど。」



マンガとかでよく読む展開。彼氏に役職がついてて、しかもかなり目上の人ともなると、なんともオンオフが切り替えにくいものだ。


例えば、学校で友達をお母さんと呼んじゃうことない?それが仕事場で起こるとも限らない。


仕事中にうっかり「翔吾。」なんて呼んでみろ。女子社員たちからフルボッコだ。




< 123 / 288 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop