拾い恋(もの)は、偶然か?




「で?なにしに来たんだ。人の家に勝手に入って。どうやった?」



だけど司馬さんは、それを気にすることなく、衛さんの前にコーヒーを置きながらそう尋ねた。それは私も思っていた。いくら弟だからって、司馬さんの家に無断で入ってくるなんてありえないだろうって。


ここに来るのは初めてだけど、他の誰かと住んでいる様子はない。司馬さんの家は書斎とベッドルームの2部屋しかなくて、あとは広めのリビングだけ。


よく見るお金持ちの家のように無駄に多い部屋数じゃなく、独身男性が困らない程度の最低限の広さの部屋だった。



「母さんがカギをくれたんだ。」


そう言った衛さんが鍵を掲げてみせる。だからといって、勝手に入っていいということにはならないと思うんだけど。



「返せ。」


司馬さんが鍵を取ろうと手を出すけど、それは虚しく空を掴もうとしただけだった。



「どうして?彼女といちゃつけないから?」



鍵についたキラキラのキーホルダーのリングに指を通して、衛さんが不敵に笑う。くるくると回るそれが室内の照明を反射させて輝いて見えた。



さっきから感じていた違和感。


司馬さんの険しい表情、弟さんのこの舐めたような態度、そして、なんとなく、2人の間で漂う空気。


「そりゃ遊び放題だよね。デキる可能性なんてないんだから。」

「っっ、衛!」



あまり、いや、凄く、好きじゃない。




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