拾い恋(もの)は、偶然か?



それなのに翔吾さんは、結婚ありきで行動している節がある。

天然の思い込みなら軽くスルーするところだけど、なんせ人生のかかった結婚だ。なんだかこうしてあっさりと行動に出られてしまうと、結婚自体を軽く考えてるんじゃ、なんて勘繰ってしまう。


「部長でしょ。さっさと仕事しなさいよ。」

「部長でも休憩はする。」


松崎さんの悪態に笑顔でそう答える部長は、私の定食のプレートに食べ終わったうどんの容器を置いた。

「部長?」

「ついでに持っていくよ。仕事に戻らなくちゃ。」

「あ、ありがとうございます。」

「ん。」


じゃあね、とさわやかに手を振った部長は、定食プラスうどんの乗ったトレイを軽々と持ち上げて背を向けた。


部長とすれ違う度、社員たちから挨拶が飛び交う。それに一つ一つ丁寧に答えながら、ゆっくりとその背中が雑多の中に消えていくのを見つめていた。


「ほんとにさ、私の時とは大違いで腹が立つんだけど。」


松崎さんが残りの水を煽ってそう言った。


「そりゃ、違う人と付き合ってるわけですから、そうでしょう。」


鳴海先輩の意見に私も賛成だった。付き合い方は十人十色。全部の元カノと同じ付き合い方をしてきたなんて言われても困る。



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