拾い恋(もの)は、偶然か?
さすがにシャンプーとリンスが一緒になってるやつじゃ洗わないけど、その辺の特売品で十分だ。
「でも好きだよ。あの匂い。」
「……なら、そのままでいいです。」
話しているうちに、私たちはいつの間にかレストランの個室にいた。ドレスコードがあるんじゃないかと思ったほど豪華な店内には、一日働いてそのまま来たような人はいないように思えた。
「司馬様。また後でご注文を伺いにまいります。」
「ああ、ありがとう。」
店員が翔吾さんを名指しなのがものすごく気になる。漂う常連感。いつも以上にかっこよい祥吾さん。行きつけの店がここなんて、さすがセレブだ。
私の行きつけなんてこの間の居酒屋くらい。思いつく限りのお店を考えてみてもチェーン展開している安さが売りの店ばかりだった。
「音、なに食べる?」
祥吾さんは隣。翔吾さんの正面に座る松田部長はすでに決めたのか、メニューをたたんでその変に放った。
わざわざメニューを差し出してくれている祥吾さんからメニューを受け取ってみてみると。
あれ、お値段の表記がありませんが。
それだけで小心者の私はなるべく安そうなものをチョイスしようと目が忙しない。