拾い恋(もの)は、偶然か?




「なんでもいいよ。ゆっくり選びな。」


自分のメニューを見もしない祥吾さんは頬杖をついて私を見つめてくるだけ。そんなに見られたら私の顔に穴が開きそうなんですけど。

「祥吾さんは決まったんですか?」

「俺?ああ、そうだね。」

そう言いながらも祥吾さんの視線は一切外れることなく、終いにはテーブルの下から手を握ってくる始末。いや、嬉しいんですけどね、私にはメニューチョイスという大きな課題があるわけですよ。


「ここのラザニアは美味しいよ。ボタンエビのタリアテッレも絶品だな。」

「へー。」

メニューを見ている間も、手をにぎにぎ、絡めてにぎにぎ。


「これは?なんなら俺とシェアして半分ずつにする?」

「それも魅力的です。」


改めて見てみるとさすがのラインナップ。高級店のメニューらしく料理の写真はないけれど、名前だけでよだれが出そうだ。


「デザートは?音はプディングが好きだろ。」

「なんで知ってるんですか。」


プリンは大好き。仕事で疲れた時とか、結局そうじゃなくても買ってるけど、とにかくコンビニやスーパーに売っているものなら全種類網羅したほどだ。だけどそのプリン好きを祥吾さんの前で言ったことはないのに。



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