拾い恋(もの)は、偶然か?
「俺はなんでも知ってるよ。」
「やだストーカーみたい。」
「あながち間違いじゃないな。」
お互いクスクス笑ってると、なんだかダークな気配が。それをたどってみると、松田部長の視線が突き刺さる。呆れというか軽蔑というか、とにかく、もういい加減にしろ的な。
「私、これにしよー。」
これ以上怒らせるのも嫌だから、祥吾さんが進めてくれたボタンエビのタリアテッレにすることに。
すると、頃合いを見計らったかのように店員さんが部屋に入ってきた。メニューを見もしていない翔吾さんがサラリと私の分まで注文をしてくれる。
注文を終え、店員が部屋を出て行った時、おもむろに翔吾さんが立ち上がった。
「ちょっと、離席。」
「あ、はい。」
スマホを気にしながらだったから、電話かもしれない。軽く返事をしたのはいいけど、個室に残されたのは私と松田部長だけ。
部長はスマホをいじって終始下を向いているけど、シンとした室内、松田部長と2人きりはなかなかの気まずさだ。
祥吾さん早く戻ってこないかな。それか松田部長、タバコを吸いに行けばいいのに。自分もスマホをいじるという手もあるけど、仮にも会社の上司の前でそれは失礼だろうかと思い直した。