拾い恋(もの)は、偶然か?



「……もはやノロケを通り越して怖いな。」


いや、あなたが言えって言ったんでしょうに。だけどこの間も鳴海先輩にどこが好きか聞かれてほぼ同じことを答えたら、ドン引きされたっけ。

でも考えてみてほしい。要するに私は……。

「翔吾さんが大好きってことです。」

結果的にはそういうことなのだ。そう結んだ私に、松田部長は小さくため息を吐いてうつむいた。


「……あいつの"欠陥"のことは?」


不意に出た言葉は、私を一気に不快にさせる。


「マジで殴りますよ。」

「ほんとのことだろうが。」


翔吾さんが子供を作れない体であることは、一般的に言えば欠陥なのかもしれない。将来もし、私と翔吾さんが結婚するとしたらそれは、避けることのできない問題になることは間違いない。


「……親切な弟さんに教えていただきました。」

「なんだよ。衛がもう動いてんのか?」


驚いてみせている松田部長は、どうやら衛の存在を知っているらしい。翔吾さんの深い事情まで知っているあたり、本当にプライベートでも仲がいいことが伺える。


ものすごく面白くない。

それはもちろん、私の幼稚な嫉妬も含まれている。だけどそういうことじゃなく……。


それだけ仲がいいなら、なんで欠陥なんて言葉を使うんだろう?ってこと。


「あいつキモイですよね。」

「すげーこと言うなお前。」


翔吾さんの親友なら、もっと慎重に言葉を選んであげてほしい。



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