拾い恋(もの)は、偶然か?
「お前、翔吾と結婚するんだろ?」
「は?」
いたよ、ここにも。なんで当然結婚する前提で話をしてるんだろう?翔吾さんは普段から結婚前提で話しているけど、私はまだプロポーズすらされていない。
「プロポーズされてないですし。」
「いや、ほぼ嫁扱いだぞあいつ。」
「……。」
そこはマジでこだわらせてほしい。私は一応女性なわけ。女の子。ウーマン。
女なら、素敵な男性に最高のシチュエーションでプロポーズされて、感動の涙を流しながら静かに頷く。そんなシーンに憧れているもの。
間違ってもこんな状況は望んではいない。
「お前、どうなってんの。」
「うーん。そういえばしてないよね。」
「はぁ?」
すぐ後ろから聞こえた低音ボイスに驚いて体がはねた。松田部長、その呆れ顔に賛同します。
「翔吾さん、いつからそこに?」
「プロポーズされてないですし、から。」
その言葉に内心ホッとした。松田部長の"欠陥"発言は聞いていないみたいだったから。
「ごめんな、音。俺はもう音が妻のつもりでいたよ。」
「気が早すぎて引きます、翔吾さん。」
「ははっ、酷いなぁ。」
全然こたえてなさそうな翔吾さんは、私の隣に座って水を一口飲んだ。