拾い恋(もの)は、偶然か?
「それなら改めて後日、プロポーズするよ。考えうる限りの最高のシチュエーションを約束する。」
「……。」
なんだろ、ほんとすごく申し訳ないんだけど、そうやって予告されたらされたで、気負ってしまって嫌、というか。
それに。
「翔吾さんにとって結婚ってなんですか?」
「ん?それは難しい質問だな。」
私にとって結婚って、かなりの一大事業だと思っている。だって担保は自分の人生を賭けるわけだから、よっぽどお金を借りるよりリスキーだ。
「私の人生も、翔吾さんの人生もかかってるんです。それをなんだか軽いものみたいに。そういうのどうかと思いますよ?」
言ってハッと気が付いた時にはあとの祭り。唖然とした表情の松田部長。笑顔のまま固まっている翔吾さん。しまった。言い過ぎた。
「あの、すい」
「さすが、音だ。」
「へ?」
気が付けば翔吾さんに抱きしめられていて。
「失礼いたします。え?」
ちょうど入ってきた店員さんが目をまんまると見開いているのが肩越しに見えた。
「ああ、そこに適当に並べてくれる?」
「かしこまりました。」
「音、好きだよ。」