拾い恋(もの)は、偶然か?
店員さんにササっと指示を出した翔吾さんはまた私を抱きしめて耳元で甘く囁いた。これは、公開処刑かなんかかな?気まずさを通り越してもはや爆死しそうなんですが。
「わ、分かりましたから離れてください!」
「どうして?」
首を傾げるそのあざといしぐさを至近距離で食らってしまえば、もはや私はノックアウト寸前だ。こういう時頼れるのは松田部長だけだ!
「ま、松田部長!ヘルプミー!」
「ブハッ!」
私の救助要請もむなしく、松田部長はお腹をかかえて笑っている。
そうしている間にも恥ずかしそうにこちらをチラチラ見ながら、店員さんは料理を並べ終えて退室してしまった。
ほんとに、恥をかいたよ。これ以上に恥ずかしいことなんてないよ。私は今日、大切な何かを失った気がした。
「もう、どうしたんですか?翔吾さん!」
個室とはいえ、外でこんなに甘えてくるのは珍しい。いつもデレデレしてるけど家から一歩出ればまだ常識的に行動してる人だった。
……社内メールとか、そういうものが面倒だけど。
それが。なんだか今日はタガが外れている気がする。一緒にいるのが松田部長だからだろうか?