拾い恋(もの)は、偶然か?
「へぇ、君が?」
やっぱり。予想通りの不躾な視線に苦笑いするしかない。
「翔吾とお付き合いしているらしいね。」
「はい。お付き合いさせていただいてます。」
でも自分が言った台詞にややテンションが上がる。お付き合いさせていただいてますだって。これで快く受け入れてもらえるのなら、これ以上のことはないんだけど……。
私の言葉に、社長はその整った顔を嫌そうに歪めた。
「申し訳ないがね、息子には近々お付き合いする予定の方がいるんだ。彼女を不快にさせるわけにはいかない。君には残念だが、別れてもらうよ。」
その一言で、私の存在なんてあっさりと粉みじんになってしまう。分かっていたことなのに、なんでこんなに悲しいんだろう。
ーーー、
「失礼致します。」
別れろ、以上。社長の言いたいことは実に簡潔だった。しかも、別れてくれないか?というお願いじゃない。別れてもらう、という、少しオブラートに包んだ命令だった。
社長室前の受付には、松崎さんがいる。さっきまではいなかったのに。
「社長、なんだって?」
「別れろって言われました。」
「うわ。ほらねー。そうだろうと思った。」
予想が的中したことを喜んでいる松崎さんは、でも、と続ける。
「どうせ別れる気ないでしょ?」
「まぁ、そうですね。」
私の返答に、松崎さんは嬉しそうに笑った。
「修羅場の匂いがするわ!」
……明らかな野次馬根性感を出して。