拾い恋(もの)は、偶然か?


ーーー、


「古蝶音さんですね?社長がお呼びです。至急、業務を停止して社長室までお願い致します。」

「なに言ってるんですか?松崎さん。」


秘書モードの松崎さん。黙ってればやっぱりものすごく美人。小さく頭を下げる所作も完璧で、物腰も柔らかく、圧倒されてしまう。


「仕事よ。だからなにも言わずに社長室行きなさいよ。」

笑顔はそのまま、松崎さんは低い声でそう言う。


「社長が何の用だろ?」

「鳴海、あんた意外とボケッとしてんのねぇ。」

「は?なにが?」


そうなんです。鳴海先輩には申し訳ないけど、この呼び出しがただの業務の一貫とは決して思わない。

眉間に皺を寄せる鳴海先輩を鼻で笑って、松崎さんは同意を求めるように私を見た。


「あんまり、行きたくないんですけど。」

「社長命令よ。」


口角を上げる松崎さんの意地悪な笑顔。きっとあなたなら気付いているんでしょうね。

翔吾さんは今、お得意先に会いに行っていてここにはいないということに。


彼氏の不在中、彼の父親に呼び出される。しかも親子仲が対して良くないと思われる中、だから。


悪い予感しかしねえ。



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