拾い恋(もの)は、偶然か?




私だって気にしていないわけじゃない。だけどもう、あんなに可愛い人をこの腕の中から手放すなんて考え、1ミリだって湧かない。



「どうするかなー。」


小さくため息を吐いた。


私が不利なのは当たり前。相手は雇い主だ。さすがに息子と別れないからクビとはならないけど、あっちがその気になったら私はいつでも追い詰められてしまうだろう。

私には、立ち向かえるほどのスキルはない。仕事で黙らせるなんてかっこいい真似はできそうになかった。


だけど、だからと言って好きという感情だけで結婚は成立しないわけで。彼との結婚を考えている以上、親の問題は切っても切れないもの。



翔吾さんは、どう思うかな?


お父さんが私に言ったことを聞いたらどうなる?

傷つくかもしれない。怒るかもしれない。


……お父さんの言う通りにするかもしれない。


信用とか、そんなことじゃなく、きっと翔吾さんなら私のためになんでもしてしまいそうだから。


それが怖くて、腹立たしい。



自分の幸せより、私の幸せを選ぶなんて。紳士的で素敵だけど、わがままにもなってほしい、なんて。

そんなことを思う私の方が我がままかもしれない。



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