拾い恋(もの)は、偶然か?




そこへ、部長から着信。



[会社の駐車場で。]


駐車場なら、そう利用している社員はいないはずだ。そう思って鞄を持って部署を出る。


ここは、返信すべき?すぐ行きますって。でも駐車場はエレベーターですぐ行けちゃう。すぐに会えるのにわざわざ返信するのも変?


こういう訳の分からないことすら、悩んでしまう。それだけ恋というものは、厄介なものなんだろう。



[分かりました。]


結局メッセージを返すことにして、エレベーターのスイッチを押した後、そう返信した。部長からのメッセージは返ってくるだろうか、なんて、変な期待を膨らませる。


「ねぇ。」

「え?」


そのせいか、スマホばかりを見ていた私は。


「それ、翔吾から?」


隣に松崎若菜さんが立っていたことに、気付けなかった。


翔吾


私もまだ、呼ぶことに慣れない。そういえばあの人は、名前で呼ばれたがっていたなと思った。


「……まぁ。」


イラつきと胸の苦しみが一斉に襲ってきた感じ。そして突然現れたこの人の存在に心底驚かされているのも手伝って、私の心臓はもはや壊れそうなほど高鳴っていた。




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