拾い恋(もの)は、偶然か?





松崎さんは秘書課。経理部の階にこの時間いるのは不自然だ。そりゃ、仕事のことでここに来ているのを見かけることはあるけど、経理部の見渡せる限りの社員はみんな帰っている様子だったから仕事のこととは考えにくい。



もう一つ、思い当たることはるけど。


「さっきまで翔吾に会ってたのよ?」

「……。」


それが正解だった場合、こんな風にダメージが大きいから考えたくはなかった。


何も言えない私はただ、松崎さんの方を見ないようにして、エレベーターが来ることを祈るしかない。いや、別の誰かが来てもいい。だから、とりあえずこの人から解放してくれ。


「部長室で、何してたか知りたい?」


明らかな挑発だと分かっていても、元カノであるこの人が言えば、何かしら想像してしまうことは仕方がない。頭の中で膨らむそれらは、もはや現実のものとして目の前に具現化できそうなほど鮮明に妄想でき、自分の想像力を恨んでしまう。


「なにか言いなさいよ。」


私が何も応えないからか、松崎さんの声が険しくなる。そこで漸く彼女を見れば、ものすごい形相でこちらを睨む松崎さんと目が合った。


まさに、キツネに睨まれた蛙。あれ?蛇だっけ?




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