拾い恋(もの)は、偶然か?
「音?」
「え?」
気が付けば、部長が運転席でハンドルを握っていた。しきりにこっちを気にする様子から、どうやら自分がまた異世界へ飛んでいたことを確信させる。
「すみません。」
「疲れてる?」
まぁ、そう言われればそうなのかもしれない。突然の肉食獣の出現に心が疲れてます、とは言えないけど。
「じゃあ今日は早く送っていこう。」
「……ありがとうございます。」
そんなことに気付いていないらしい紳士は、優しい笑顔を浮かべて私を気遣ってくれる。ああ、私って幸せなんだろうな。こんな優しい彼氏に優しくされて、夕食をお腹いっぱい食べて、そして車で家まで送ってもらう、なんて。
「じゃあ、お休み。」
そして帰り際、触れるだけのキスをするの。王子様みたいな笑顔で帰っていく彼の背中を見送りたいけど、鍵をかけるまで待ってる、なんて言われて。
ああ私って愛されてる。守られてる、なんて思いながら扉の前で……。
「笑えねえ。」
そうしたかったのはやまやまなんですがね、私はこんな可愛らしい恋は望んでいない。