拾い恋(もの)は、偶然か?




「じゃーこうしよ。失恋したら一緒に泣こうね会。ね?」


「それじゃ私が失恋決定みたいじゃないですか。」



昨日、その当人に告白されたんですけど!とは死んでも言えないけど。


「違うの?」


わざと、目を丸くして驚いてみせる先輩を見て、思わず噴き出した。


「ふはっ、確かに。」

「でしょ?」



今度は踏ん反り返る先輩。鼻が尖がっているとばかりに胸を張って、エヘンと得意げに笑ってみせている。こういうところだろうな。リア充かそうでないかは。



先輩は美人で、愛嬌もある。上手くできない私とは大違いだ。


「まぁ、いいです。行きましょう。」

「初めから言っとけよー。」



先輩に肩を抱かれて、部署の扉を開けた。その時の私たちを見ていたその目は、いたずらっ子のように愉快げに細められていたことを、私は知らない。



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