私の本音は、あなたの為に。
「大ちゃん、そう言えば何でこんな所に居るの?」


それから少し会話をした後、私は帰り道を歩きながら大ちゃんにそう聞いた。


「えっ?…ああ、そうそう!」


私の後ろについて来ていた大ちゃんは、ぽんと手を叩いて私の隣に並んだ。


「俺、この間帰国したばっかりでさ。で、懐かしい思い出に浸ろうと思って此処に来たら、優希ちゃんのママに会ったんだよね」


「えっ、この間!?」


私は、驚いて大ちゃんを見上げた。


(ずっと前に、帰って来たんじゃなかったの?)


先程の大ちゃんの口調からは、そうだとしか思えなかったけれど。


それ程、リハビリ等が難航したのだろうか。


私のそんな表情に気付いた大ちゃんは、胸にかけたサングラスを手で揺らしながら説明をする。


「いや、手術は数年前に成功したよ?…でもね、リハビリが本当に大変でさー…。何て言うのかな、とにかく辛かった」



私はあんぐりと口を開けたまま、大ちゃんの横顔を見つめていた。


大ちゃんの笑顔が、作り物に見えた。


それ程、リハビリは過酷だったのだろうか。


「…てか、俺何でこんな話してるの?…まあいいや」


大ちゃんははっと我に返った様に自問自答をし、


「でも、リハビリ自体は半年位前には終わってさ。…それからは、観光してた」


と、かなりシンプルに話をまとめた。
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