私の本音は、あなたの為に。
それを見た私は、心の中でふっと息をつく。


そして、私は五十嵐の隣から同じ様に本を覗き込んだ。


いつの間にか、口から出そうな程激しく打っていた心臓の鼓動は、いつも通りのテンポを刻んでいた。



「……〇〇中、学校の……学校?学級…?…え?何これ?…学……無理、安藤ヘルプ」


早くもぐうの音を上げた五十嵐は、頭を掻きながら私に問題である文章を見せた。


“〇〇中学校の学級委員であるこの少女は、先生以上に厳しい”


その文章を見て、私は自分で選んだ本のはずなのに吹き出しそうになる。


「何処が分からないの?」


「……学校?学級?学習?……みたいな所」


どうやら、五十嵐は“学級委員”の所を言っている様だった。


最初の1文字が分かるのならば、後は簡単だ。


「これね、“学級”って書いてあるよ」


「此処が、“学級”…?」


五十嵐は、小首を傾げながら“学級委員”と書かれた所を指差した。


「ううん、ここまで。下の漢字2つは、自分で呼んでみて」


「え……」


明らかに嫌そうな顔をした五十嵐は、頬杖を付きながら2つの漢字を見始めた。


「学級だから……学級崩壊とか?」


学級文庫、学級通信……色々あるよね、と五十嵐は本から目を離して笑ってみせる。


「五十嵐、言葉の続きを想像しないで漢字を読んで?」
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