私の本音は、あなたの為に。
しかも学級崩壊って…、と、私は口角を上げながら突っ込む。


「だってー…」


読めないー、と五十嵐はぶつくさ言いながらも文字に目を通す。


「……学級、」


五十嵐は眼鏡を手で持ち、上げたり下げたりを繰り返している。


「学級…………」


沈黙が流れ、それを破り、また沈黙。


そんな事が何度続いただろうか。


けれど、時間にするとたった2分程。


「えーっとね、学級……てか、本当にこれ学級って読むの?」


もう分かんないよー、と、五十嵐はいらいらした様に髪の毛を掻き回す。


「ほら、頑張って」


自分の短い髪の毛をとかしていた私は、くしで本のページをとんとんと叩く。


「んー…」


五十嵐は、先程と同じ様に本を覗き込むけれど。


「……無理」


その口から発せられた言葉は、今までに聞いた事が無い程低かった。


その声は図書室中に響き、私の頭の中に吸い込まれる。


「もう、無理。…読めない!」


五十嵐は勢い良く目の前に眼鏡を投げ付け、自分の苛立ちをあらわにした。


「ちょっ!」


突然の出来事に、私は口を開いたり閉じたりを繰り返すだけ。


五十嵐がここまで自分の感情をあらわにした所を見たのは、初めてだった。


「…読める訳ないじゃん、俺に」


「え…」
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