私の本音は、あなたの為に。
今度は、ママが目を丸くして固まる番だった。


「…でも、あなたの髪の毛は短いでしょ?あなたは、勇也じゃないの…?」


「っ…!?」


(ママ、私の髪の毛が短くなったからお兄ちゃんだと勘違いしているの!?)


(そんな…!)


私は、愕然とその場に固まる。


私の手が、微かに震えていて。


背中を、変な汗が伝う。


「ママ、私は優希だよ……。お兄ちゃんじゃ、ないよ……」


辛うじて絞り出したその声は、私のものとは思えない程しわがれていて。


ママは、そんな私を不思議そうに見つめる。


そして。



「勇也、冗談言わないで。あなたは勇也でしょう?何を言っているのよ」


その言葉は、私の綺麗に輝いていた心に大きな穴を開ける。


そして、何度も何度も尖った刃のように私に向かって突き刺さってくる。


「少し見ないうちに、随分変わっちゃって…。まるで女の子みたいな格好をしていたから、驚いたのよ」


(ママ、私の事が分からないの……?)


「でも、もう大丈夫よ。今からあなたの大好きなサッカーのお店で、勇也の好きな洋服を買ってあげるから」


(私、サッカーの事なんて知らないのに……)


「ほら、いつまでそこに立っているのよ。そんなに嬉しいの?早く来なさい、一緒に見ましょうね」


(違う、違うよママッ……!)
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