私の本音は、あなたの為に。
本当は、私は怖かった。


いつもなら、自分が悪い立場ではなかろうとこういう事は避けてきたはずなのに。


けれど、今日は違う。


隣に、花恋が居てくれるから。


彼女が居るだけで、何でも出来そうな気がした。


(一緒に居れば、何も怖くない)


そう、思えた。



私達が応接室に着いた時には、もう佐々木は椅子に座って待機していた。


私と目が合った佐々木は、何も言わずに目を逸らす。


次に佐々木と目が合った花恋。


怖いもの知らずな彼女は、彼に向かって怒りのこもった睨みをきかせていた。


そして、私達2人は佐々木と向かいの席に座る。


私達を追いかけるようにして岩下先生が姿を現し、佐々木の隣の席に座った。


「じゃあ…何があったのか、話してもらおうか」


その言葉が、合図だった。



「佐々木が、いつもみたいに私の事をからかってきたんです」


私と花恋は息せき切って説明し始めた。


「いつもって…?」


岩下先生が首を傾げる。


何も知らない先生までは、クラスの情報が回りきれていない様で。


「私、いつもからかわれていたんです。前まではそこまで酷くなかったから、無視をしたり少し言い返したりして終わっていたんですけど…」


そこまで聞いた佐々木が、何か言いたげに口を開く。


けれど、その口から声が発せられるのを防いだのは、花恋だった。
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