私の本音は、あなたの為に。
後戻りが出来ないと分かったあの日から、私はサッカーについて学び始めた。


ママは私の事を勇也だと見ているのに、私がサッカーの事を何一つ知らなかったら、怪しまれてしまうかもしれない。


だから、私は極力


“私は勇也”


だと思って行動をしてきた。



中学校では、


(お兄ちゃんならどうするか)


を常に考え、その通りに行動した。


勇也に、近付くために。


“安藤 勇也”にそっくりになる為に。


その為に、自分を騙し続けてきた。


騙して、騙して、騙し続けて…。



高校生活2日目で、もう私は自分を騙すのだ。



「それでは、今年度前期の委員会を決めたいと思います。…図書委員会、やりたい人は手を挙げてください」


私は手を挙げる。


周りを見回すと、女子で手を挙げている人は私しか居なくて。


「じゃあ、女子は安藤さん。男子は……」


先生の視線が少しずれる。


先生の視線を追い掛けて隣を見ると、五十嵐君が手を挙げていた。


「じゃあ、男子は五十嵐君で決まりね。…図書委員会は、安藤さんと五十嵐君です」


パラパラと、まばらな拍手の音が聞こえた。


(五十嵐君と、同じ委員会なんだ…)


そう思って隣を見ると、彼も同じ事を思っていたのか、私の方を見ていた。
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