遅すぎた初恋
秘密の薔薇園
クリスマスパーティーでの騒動以来、慌ただしく日は過ぎ、いつの間にか緑美しい初夏に差し掛かろうとしている。

心配していた新年の一族の集まりも、クリスマスパーティーでの出来事の影響で、ただただ平和に終わった。面白いもので、弟の妻にも少数派のファンが出来ていた。叶もその一人だ。

抹殺されそうになった分家筋の男は、分家筋一同が母と弟の妻に頭を下げ、今後一切星羅さんには文句は言いませんと念書を書かされ、なんとかお家断絶は許された。

母自身、その昔は公家の流れを汲むという由緒正しき御令嬢だが、至って普通の常識人だ。当たり前に善と悪の区別がついているし。お金があろうが無かろうが、人としての価値の基準はそんなものでは無いという見方は当たり前に備わっている。

だから、念書を書かせたとしても、それを振りかざしてどうこうしようという気はさらさら無い。とにかく、なんの後ろ楯の無い自分の可愛いい嫁の立場を確立する為に動いている。

弟はニューヨークで個展を開催する事が決まり、今はニューヨークを行ったり来たりしている。
また、合間を縫って、新しい作品を手がけたりと、忙しくも充実した日々を送っているようだ。
エセ画家でなくて良かった。

私も年始の集まり以降、忙しさにかまけて実家には顔を出さずにいたが、母から呼び出しがかかる前には、一度戻った方が身の為だと嫌々お里帰りをした。
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