遅すぎた初恋

そよ風に揺れる新緑の葉と美しい花々は日々の喧騒で疲れた心を癒してくれる。
「広高坊ちゃん、お帰り。」

「ああ、ただいま。吉爺、相変わらず元気そうだな。」

「そりゃ。元気にもなるわよねー。可愛いいお弟子さんが出来たんだから！」

と、使用人のトキさんが声をかける。トキさんは本宅の使用人の中でも古株だ。今は弟の嫁付きになっている。

弟子ねえ…と。当の本人を見る。つなぎを着て顔にドロを付けて、一輪車で土を運んでいる。

「おかえりなさい！お義兄さん！」
と、笑いかけてくる。

「ああ。隆次はどうした？」

「隆次さんなら、今ニューヨークに行ってます。明日、戻ってくるんです！」

「そうか。」

「若奥様、もうお昼ですし、そろそろお着替えをされた方がいいのではないですか？もう、泥だらけじゃないですか。せっかくのお綺麗なお顔が、真っ黒ですよ。」
と、トキさんが顔を顰めて言う。

「そうね！じゃあ、そうさせて頂くわ。吉爺さん、これ終わったら、お昼にさせて頂いて構いませんか？」