副社長は今日も庇護欲全開です
気持ちを切り替えて、仕事に集中しなければ。ひとまずメールを確認していると、課長が少し興奮気味に声をかけてきた。

「下村さん、すごいよ。きみの改善案が、副社長行きのコンペに通ったんだ」

「えっ? ほ、本当ですか?」

思わず立ち上がった私に、課長はクックと笑った。穏やかな性格の四十代半ばの男性課長で、私を見ながら嬉しそうに頷いている。

私たちの会社は、出版事業からネット事業、それにテレビやラジオといった幅広い分野で、メディア事業を手がける。

そのなかで、私は広報部に所属し、会社のPR部分に携わっていた。自社の媒体を利用しての、事業内容の紹介などをしている。

それに関しての業務の改善案を、二ヶ月前に出していた。それが通ったということ……?

半信半疑でア然としていると、課長が続けた。

「本当だよ。下原さんのSNSの有効活用という案が、本部長クラスの会議で通ったんだ」

「そうなんですね。信じられないくらいです……。ありがとうございます」

年に二回、社員の視点での業務案を、コンペ形式で会社が募集している。

今年で三年目になり、部署関係なくだいたい三案が吸い上げられることになっていた。

社長行きのものと、副社長行きのものがあり、その改善案はほぼ実現される。

それだけに、やりがいを感じられて、コンペに出す社員の数は多い。

もちろん、本社だけでなく支社からも提出されるのだから、かなりの倍率だ。

その中で、私の案が会議に通過できたなんて、本当に嬉しい。
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