副社長は今日も庇護欲全開です

◇ ◇ ◇

『父には、陽菜のことを話した。思ったとおり、すんなり許してはくれないようだ。でも、きみとの関係を絶対に諦めるつもりはない』

直哉さんからそう電話を受けたのは、彼から茉莉恵さんの話を聞いて一週間後の日曜日だった。

彼からの説明を冷静に受け止めた私は、感謝の気持ちと彼への変わらない想いを伝えている。

はじめから、社長に許してもらえるとは思っていなかったし、きっと直哉さんは社長からとても怒られたのではないかと思う。

それなのに、私に心配をかけまいとしてか、それ以上のことは言ってはくれなかった。だけど、”諦めるつもりはない”の言葉に、社長から厳しい反応があったのだろうとは想像できる。

私からも、社長にお話しができればいいのだけれど……。そのことを、直哉さんに相談してみようかななど、いろいろと考えを巡らせながら、週明けの月曜日も仕事が終わりオフィスを出る。

すると、ビルの玄関先で「あっ、あの人が下村さんだよ」と、他部署の男性営業さんの声がして顔をそちらに向けた。見ると、そこには可愛らしい女性が立っていて、営業さんに会釈をすると私のほうへ駆け寄ってきた。

「初めまして、下村陽菜さんですか?」

小柄なその人は、艶のある黒髪をしていて、肩ほどのセミロング。前髪は斜めに流していて、目がクリッとした女性だ。

フェミニンスタイルがよく似合っていて、同性の私から見ても素直に可愛いと思えた。

「は、はい。そうですけど……」

いったい、誰だろう。私の名前を知っているみたいだけれど、顔見知りではないし……。不審に思っていると、彼女はニコリとした。

「私は、竹田茉莉恵といいます。一応、直哉くんの結婚相手です」
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