副社長は今日も庇護欲全開です
ヤキモチ……ではないと言えば、嘘になる。どうしても、彼女の呼び方が気になってしまい、聞いてしまっていた。

「茉莉恵は、見た目と違ってずいぶん男勝りな性格でね。俺とは、男女を越えた友人感覚なんだよ」

「だから、呼び捨てなんですね……?」

どことなく納得できないけれど、あまり聞いて鬱陶しいと思われても嫌だから、それ以上は聞かないでいよう。

そう思い黙って伏し目がちになっていると、彼のクスクスと笑う声が聞こえた。

「住川くんは、あのとおり人とは距離を置く人だから。気軽に呼び捨てにできる関係じゃないんだ」

私の心を見透かしてか、直哉さんのほうから付け加えてくれる。それをバツ悪く思いながらも、彼にちらりと視線を向けた。

「陽菜が、気にすることはなにもないよ。今さら茉莉恵に対して、呼び方を変えられないだけだ」

そう言った直哉さんは、そっと唇にキスをしてくれる。“安心していいよ”と言われているみたいで嬉しい半面、子供っぽい自分が情けなくなった。

「ごめんなさい、直哉さん。呼び方くらいで、気にしてしまって……」

「謝ることじゃない。俺も同じだよ。きみのことになると、冷静でいられなくなる」

直哉さんはそう言ったかと思うと、再び唇を重ねた。そんな彼の体に身を預け、しばらくその温もりに浸っていた。

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