副社長は今日も庇護欲全開です
行こうって……二人で一つの傘に入るということ? 戸惑う私に、副社長は涼しげな表情を向ける。

「なにやってるんだ?」

「い、いえ……。本当にすみません、失礼します」

副社長は、私が隣に並ぶことに抵抗はないのかな……? 緊張でいっぱいになりながら、彼の傘に控えめに入る。

彼の黒い無地の傘には、ワンポイントとして小さなロゴが書かれていた。よく見ると、高級ブランドのロゴで、心のなかで驚いてしまう。

突然の雨だったからか、通りでは傘が無く走って帰るビジネスマンや、私たちのように“相合傘”をさしているカップルがいる。

意識しているのは私だけなのか、チラッと副社長の顔を見上げると、いつも見せているクールな表情をしていた。

雨の街は車が渋滞していて、時折クラクションの音も聞こえるうえ、雨足も強い。

普段は一人で歩く雑踏のなかを、副社長と歩いていることが不思議で仕方なかった。

「結構、ひどい雨だな」

「本当、そうですよね。ところで副社長は、いつも電車で通勤されるんですか?」

副社長も駅に向かうということは、そういうことなんだろうと思い聞くと、彼は小さく首を横に振った。

「いや、今日は事情があって、駅前に車を停めてるんだ。普段は、ビルの駐車場を使ってる」
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