副社長は今日も庇護欲全開です
「そうなんですね……。考えてみれば、副社長が電車通勤されないですよね」

真中副社長が満員電車で通勤だなんて、想像できない。気まずく思いながらぎこちない笑みを向けると、彼は私をチラリと見たあと言った。

「そういう意味じゃないんだ。どうしても時間が不規則だから、車通勤のほうが便利なんだよ」

そうか……。副社長なんだから、仕事が忙しいよね。朝が早かったり、夜が遅いときもあるんだ……。

「あの……、月曜日は、ありがとうございました。とても貴重な時間をいただいたんだって、改めて思いました」

長い時間ではなかったけれど、毎日忙しい副社長が私のために時間を割いてくれたということ。

それがコンペの条件とはいえ、本当に大切な時間だったはず。

すると、副社長がクスッと笑い傘を閉じた。あっという間に、駅に着いている。

「それは、きみも同じだろう? 業務中だったのだから。それに、現場の生の声を聞かせてもらって、有り難かったよ」

「それは、私も同じです。副社長が、イメージと違ってお優しい方だとも、気づきましたし」

と言い終わって、途端に恥ずかしさが込み上げる。すると、副社長はさらにクスクスと笑った。

「よほど、俺のイメージが悪かったみたいだな。じゃあ、今は少し印象が変わった?」

「そんなことはないです。ただ、とても雲の上の人過ぎたので……。だけど、お話しさせていただいて、お気遣いが溢れている方だなと思いました」
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